指原莉乃「意気地なしマスカレード」の評価(総選挙分析ライター)
以前にHKT48の指原莉乃が歌った「意気地なしマスカレード」はソロ曲とは考えにくい、という内容の記事を書いた。
指原莉乃「意気地なしマスカレード」はソロ曲か? 151118
それと関連して「意気地なしマスカレード」について書き損ねたことを述べておきたい。あらかじめお断りしておくが、以下の解釈はあくまでも筆者の個人的な見解である。
12年10月17日にリリースされた「意気地なしマスカレード」はAKB48G総合プロデューサーである秋元康氏によれば当初『ミューズの鏡』の主役向田マキと指原莉乃の同時発売をやる構想 (2012年6月17日TBSラジオ「爆笑問題の日曜サンデー」の中の会話) だったようだ。それが12年6月の文春報道によって指原のソロシングルから指原withアンリレ(入山杏奈、川栄李奈、加藤玲奈)に変更となってしまった。
秋元康 指原莉乃への期待と構想 120624
その変更の経緯についてはAKB48の動きを少しさかのぼって見ていく必要がある。
この年(2012年)のAKB48の動きを振り返ると、絶対的エース前田敦子が3月25日にSSAでAKBからの卒業発表を行い8月の東京ドームコンサートでAKBを去った。前田は前もって11年末に秋元氏に卒業の意向を伝えている。このころからポスト前田敦子を誰にするかの検討が始まっている。それは12年始めのAKBの2つの動きに出ている。
指原は12年1月に『ミューズの鏡』の主演とソロデビューを突如伝えられ、渡辺麻友も1月に『さばドル』主演、2月にソロデビューを果たしている。この2人の身辺がこの頃から急にあわただしくなったのだ。きっと前田より年齢が若い指原と渡辺麻友が有力なポスト前田の候補として白羽の矢が立ったのだろう。そして3月の前田の卒業発表。この後運営は全力でこの2人を推すことにより2人はこの年の第4回選抜総選挙で渡辺は前年5位から大島に次いで2位、指原は前年9位から4位に順位を上げ、翌年の総選挙で十分ポスト前田を狙える位置まで順調に躍進した。
ところが指原は総選挙直後に文春に刺されHKT48へ移籍となり、渡辺麻友と競い合っていたポスト前田を狙う競争から脱落した。この当時の常識としてスキャンダルで傷ついたアイドルの復活は難しいとの判断があったのだろう。その結果、運営は指原&麻友推しから指原に代わって島崎遥香と渡辺麻友を推す戦略変更を行った。 その結果、当初指原のソロ第2弾で行くはずだった「意気地なしマスカレード」は、その当時の次世代センター候補と目されていた入山杏奈、川栄李奈、加藤玲奈の売り出しに急遽方向転換となった。運営はAKB48の将来を見据えてポスト前田の布陣ができるような動きを進めていたのである。
そういう大きな動きの中で「意気地なしマスカレード」のPRは”総選挙4位の指原が後輩を従えて”ではなく”将来有望な後輩に脅かされる先輩指原”という指原もそのファンも驚くような構図で行われた。指原のソロ曲という触れ込みながら指原はセンターではなく4人の中の右後方でTVでは新人3人にスポットが当たるという指原にとって至極格好悪い屈辱的なプロモーションだった。しかし指原はただひたすら恭順の姿勢を示してこの曲のPRをするしかなかった。この時点では指原もそのファンもどんなに蔑(さげす)まれたプロモーションであってもそれをネタとしてとらえ、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)、じっと耐えていつか捲土重来(けんどじゅうらい)を期す、しかなかったのである。
「意気地なしマスカレード」はそういう背景をもった指原にとってもそのファンにとっても辛い厳しい思い出のある曲だ。筆者が「意気地なしマスカレード」について忸怩(じくじ)たる思いを持つのは以上の理由による。
さて、この話には後日談がある。
実際、「意気地なしマスカレード」はあまり売れなかったが、その後、指原はHKT48で不屈の頑張りを見せた。「意気地なしマスカレード」でのくやしさもバネとしただろう。それをしっかり見ていたファンがなんと翌年2013年の第5回総選挙で驚異的な頑張りを見せて奇跡を起こした。運営が前年より周到に準備し何としてもポスト前田としてトップとしたかった渡辺は3位に順位を落とし、ポスト前田の候補から外れ「もうお前はアイドルではない」と秋元氏から宣告された指原がその当時誰にも負けないと言われていた大島優子を破りトップとなった。ファンは運営が創った”偶像”アイドルではなく、指原のような”素の姿を見せる”アイドルを強力に推したのである。「選抜総選挙」という仕組みがなければ絶対に誕生しないトップである。
指原はトップになった直後の”笑っていいとも”で「一位とったぞ。なめんなよ バカヤロー!」と叫んだがその叫びは自身の気持ちもさることながら指原ファンの心情をも代弁してくれた。「意気地なしマスカレード」で運営から受けた屈辱をファンとともに晴らしたのである。
運営の思惑は翌年の第6回総選挙でなりふり構わず渡辺麻友を推して指原を破り、渡辺がトップとなったところでいったんは達成したが、その後は微妙である。アンリレは第5回総選挙で入山が30位、川栄25位、加藤圏外。そしてこの3人は今年の第7回総選挙で加藤28位、入山は選挙辞退、川栄は卒業し、まだとてもセンターを狙えるところまでは来ていない。島崎は第5回12位、6回7位、7回9位と伸び悩んでいる。当初の思惑どおりには進んでいない。
他方で、指原はご存じのとおり第6回は2位に落ちたものの、今年は再びトップに返り咲き、泣きが入るほど忙しい毎日。また、次世代センターとしては指原が移籍しチームのPRに努めたHKT48の宮脇咲良(AKB48兼務)が最有力候補となっている。
そうなると、「意気地なしマスカレード」は前述のネガティブな評価とは別に、稀代のアイドル指原莉乃がそのファンとともに運営側の思惑を打ち砕き、日本のトップアイドルへ飛躍する踏み台とした記念碑的曲という歴史的評価を得るかもしれない。
以上
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それと関連して「意気地なしマスカレード」について書き損ねたことを述べておきたい。あらかじめお断りしておくが、以下の解釈はあくまでも筆者の個人的な見解である。
12年10月17日にリリースされた「意気地なしマスカレード」はAKB48G総合プロデューサーである秋元康氏によれば当初『ミューズの鏡』の主役向田マキと指原莉乃の同時発売をやる構想 (2012年6月17日TBSラジオ「爆笑問題の日曜サンデー」の中の会話) だったようだ。それが12年6月の文春報道によって指原のソロシングルから指原withアンリレ(入山杏奈、川栄李奈、加藤玲奈)に変更となってしまった。
秋元康 指原莉乃への期待と構想 120624
その変更の経緯についてはAKB48の動きを少しさかのぼって見ていく必要がある。
この年(2012年)のAKB48の動きを振り返ると、絶対的エース前田敦子が3月25日にSSAでAKBからの卒業発表を行い8月の東京ドームコンサートでAKBを去った。前田は前もって11年末に秋元氏に卒業の意向を伝えている。このころからポスト前田敦子を誰にするかの検討が始まっている。それは12年始めのAKBの2つの動きに出ている。
指原は12年1月に『ミューズの鏡』の主演とソロデビューを突如伝えられ、渡辺麻友も1月に『さばドル』主演、2月にソロデビューを果たしている。この2人の身辺がこの頃から急にあわただしくなったのだ。きっと前田より年齢が若い指原と渡辺麻友が有力なポスト前田の候補として白羽の矢が立ったのだろう。そして3月の前田の卒業発表。この後運営は全力でこの2人を推すことにより2人はこの年の第4回選抜総選挙で渡辺は前年5位から大島に次いで2位、指原は前年9位から4位に順位を上げ、翌年の総選挙で十分ポスト前田を狙える位置まで順調に躍進した。
ところが指原は総選挙直後に文春に刺されHKT48へ移籍となり、渡辺麻友と競い合っていたポスト前田を狙う競争から脱落した。この当時の常識としてスキャンダルで傷ついたアイドルの復活は難しいとの判断があったのだろう。その結果、運営は指原&麻友推しから指原に代わって島崎遥香と渡辺麻友を推す戦略変更を行った。 その結果、当初指原のソロ第2弾で行くはずだった「意気地なしマスカレード」は、その当時の次世代センター候補と目されていた入山杏奈、川栄李奈、加藤玲奈の売り出しに急遽方向転換となった。運営はAKB48の将来を見据えてポスト前田の布陣ができるような動きを進めていたのである。
そういう大きな動きの中で「意気地なしマスカレード」のPRは”総選挙4位の指原が後輩を従えて”ではなく”将来有望な後輩に脅かされる先輩指原”という指原もそのファンも驚くような構図で行われた。指原のソロ曲という触れ込みながら指原はセンターではなく4人の中の右後方でTVでは新人3人にスポットが当たるという指原にとって至極格好悪い屈辱的なプロモーションだった。しかし指原はただひたすら恭順の姿勢を示してこの曲のPRをするしかなかった。この時点では指原もそのファンもどんなに蔑(さげす)まれたプロモーションであってもそれをネタとしてとらえ、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)、じっと耐えていつか捲土重来(けんどじゅうらい)を期す、しかなかったのである。
「意気地なしマスカレード」はそういう背景をもった指原にとってもそのファンにとっても辛い厳しい思い出のある曲だ。筆者が「意気地なしマスカレード」について忸怩(じくじ)たる思いを持つのは以上の理由による。
さて、この話には後日談がある。
実際、「意気地なしマスカレード」はあまり売れなかったが、その後、指原はHKT48で不屈の頑張りを見せた。「意気地なしマスカレード」でのくやしさもバネとしただろう。それをしっかり見ていたファンがなんと翌年2013年の第5回総選挙で驚異的な頑張りを見せて奇跡を起こした。運営が前年より周到に準備し何としてもポスト前田としてトップとしたかった渡辺は3位に順位を落とし、ポスト前田の候補から外れ「もうお前はアイドルではない」と秋元氏から宣告された指原がその当時誰にも負けないと言われていた大島優子を破りトップとなった。ファンは運営が創った”偶像”アイドルではなく、指原のような”素の姿を見せる”アイドルを強力に推したのである。「選抜総選挙」という仕組みがなければ絶対に誕生しないトップである。
指原はトップになった直後の”笑っていいとも”で「一位とったぞ。なめんなよ バカヤロー!」と叫んだがその叫びは自身の気持ちもさることながら指原ファンの心情をも代弁してくれた。「意気地なしマスカレード」で運営から受けた屈辱をファンとともに晴らしたのである。
運営の思惑は翌年の第6回総選挙でなりふり構わず渡辺麻友を推して指原を破り、渡辺がトップとなったところでいったんは達成したが、その後は微妙である。アンリレは第5回総選挙で入山が30位、川栄25位、加藤圏外。そしてこの3人は今年の第7回総選挙で加藤28位、入山は選挙辞退、川栄は卒業し、まだとてもセンターを狙えるところまでは来ていない。島崎は第5回12位、6回7位、7回9位と伸び悩んでいる。当初の思惑どおりには進んでいない。
他方で、指原はご存じのとおり第6回は2位に落ちたものの、今年は再びトップに返り咲き、泣きが入るほど忙しい毎日。また、次世代センターとしては指原が移籍しチームのPRに努めたHKT48の宮脇咲良(AKB48兼務)が最有力候補となっている。
そうなると、「意気地なしマスカレード」は前述のネガティブな評価とは別に、稀代のアイドル指原莉乃がそのファンとともに運営側の思惑を打ち砕き、日本のトップアイドルへ飛躍する踏み台とした記念碑的曲という歴史的評価を得るかもしれない。
以上
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